生きていくもの

信じることに怯えてきた彼女は

いつだって無責任で

すぐに諦めては線を引く

 

しかしそんな彼女が

ある日守るべきものを見つけてしまった

 


それは彼女の命と言ってもいい

大切な 大切な宝物

 


守れる者は彼女しかいなかった

彼女は戸惑い慌てふためく

どうすればいい

何をしてやればいい

守るとは何か

 


立ち尽くす彼女の横で

腰の曲がった老婆が立ち止まり言った

 


「守るというのは信じることだ」と

「身体だけでなく、心を守りなさい」と

 


彼女は目に涙を貯めたまま

老婆の言葉に一先ず頷いた

 


けれども

信じることから逃げてきた彼女に

老婆の言葉は重く

彼女は恐ろしくなってまた

線を引こうとした

 


その時だった

彼女の手のひらの中にある宝物は

急に熱を帯び 淡く柔く光った

 


彼女ははっとする

逃げてはいけないと

彼女の耳元でサイレンが鳴る

それはスタートの合図にも似て