夏はなぜあつい
何もかもが熱を帯びているようで私はうんざりする。ジャージ姿の学生も、ショートパンツの女の子も、父の部屋にあるスポーツ紙の見出しも、うだって伏せたままでいる向かいの犬も、みんなみんな。
夏は嫌いだった。夏の持つ無神経さが特に嫌いだった。私まで前ならえを強いられているような気分がする。はしゃげ笑えと指示されているような感じがする。だから私は毎年それらに抵抗するのに精を出さなきゃならない。それは苦痛だった。
部屋の外に蜃気楼が見える。ああもう、と声に出して私は項垂れる。外に出たくなかった。しかしそれはもう随分前の夏からだった。夏は嫌いだ。夏の持つ無神経さが、その無神経さが、私に思い出させる。不躾にあの日の夏を投げつけてくる。
私は夏が嫌いだ。