2018-07-01から1ヶ月間の記事一覧

少女はいつまで夢を見る

夏の暑さに顔をしかめながら睨んだ太陽は眩しすぎて熱い。少しも似合っていないと思う制服の、スカートの裾を揺らしながら向かう先は夜の繁華街で、人の波に紛れて自分を忘れそうになった。雑音をシャットアウトする大音量の音楽だけが心震わす。独りは寂し…

重なるセンチメンタル

煙草が二本、三本と減っていく夕方。煙が時々目にしみた。このまま泣いてしまえたらいいのにと思う。泣いて泣いて目を腫らして、軽くなった身体で外を歩きたい。もうどれくらい泣いていないだろう。大人になると泣き方を忘れてしまうのかもしれない。だから…

ワンシーン

梅雨が明けようとするころ、庭の紫陽花が朽ちた。茶色く濁った花弁が何故だか可哀想で、私はしゃがみ込みそっとその濁りを撫でる。紫陽花は何も言わず風に揺れた。私も何も言わず立ち上がる。部屋に戻ろう。そう思って一歩踏み出した時、ポツポツと雨が降り…

深夜新書

深夜。コンビニへ向かう足取りはふわふわと軽い。何を買う予定もなく、ただ夜風をきって行く。夏が来た。大嫌い。夏なんか大嫌い。そう思いながら、夏の香りを深く吸う。 コンビニの明かりはやけに眩しくて、私は目を細めた。店員はみんな気だるそうだ。私は…

そこのあの子の夏休み

窓の外はジリジリという音が聞こえてくるような快晴だった。でも私は部屋の中で膝を抱えている。外には出たくなかった。学校なんて行きたくなかった。あそこは煩い。あそこは怖い。あそこは危険だ。 いつからこんな風に思うようになったのか、もう思い出せな…

欠けた愛を探してる

友人と喫茶店でコーヒーを飲みながら、友人の話す愛についてを聞いていた。友人は愛しているならこうするはずだ、愛しているならあんなことはしない、と少しご立腹な様子で熱弁している。私はそれをただウンウンと聞いていた。頭の中ではくだらないと思って…