僕の今といえば、何もなかった。金も、恋人も、友人も家族も、守るものも、生きる意味も死ぬ意味も、何もなかった。何もないというのは怖いことだ。独りは恐い。独りは恐い。知っているのに僕は、独りであることをまるで選び取ってきたように生きてきた。誰…
冬が来た。ベランダに出て煙草に火をつけ、煙を吐いたら、突然やって来た。やっと来てくれた、と私は安堵する。私は冬が来たら、空を飛ぶと決めていたから。 同棲していた男がある日突然消えたあの朝。その日は私の誕生日だった。テーブルの上には殴り書きさ…
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