下書き

緩んだ頭で街を徘徊する。今の僕ならどこへでもいける気がした。終電を乗り継ぎ知らない田舎街までやってきた。僕は歩き回る。東京にはそうない畦道を、やけに目立つコンビニの前を、照明の落ちそうな自販機の前を、どんどん進んだ。宛てもなく、ただただ歩き回った。何がしたいとかそんなことはどうでも良かった。何かを探しているわけでもなかった。街灯がほとんどない夜道を一人で歩いている。そうして疲れた頃、目の前な現れたのは錆びたピンクの外壁とやけに明るい看板、田舎町の小さなラブホテルだった。

 

僕は何故かここで足を止めた。何かに誘われているような気がしたからだ。フロントで受付を済ませなけなしの金を払って屋上階の部屋に入った。部屋は小さく、セックスをするためだけと言わんばかりの大きなベッドが部屋のほとんどを占めている。僕はそのベッドに倒れこんだ。物音も誰かの声もしない。静かだった。孤独を確かめざるを得ない静けさだった。僕は起き上がり、使い古された灰皿を手に取って煙草に火をつけた。