2018-02-06から1日間の記事一覧

月と太陽

夜が好きだと言う人は多い。その静寂さだとか、澄んだ空気だとか、夜特有の孤独に身を落とすのがいいだとか、理由は様々だ。けれど私はそのことを知っても、太陽の当たる昼間が一番好きだった。昼間は良い。特に晴れた日が一番いい。家の中に射し込む光も、…

同じだけの愛

恋人は、私にはもったいないくらいよくできた人間だった。何より、私のことを愛してくれているのがよく分かる。しかし私は、同じだけの愛をもって彼に接することが出来なかった。それはどうすれば彼と同じだけの熱量で彼を大切に扱えるのか、愛とはなんなの…

彼女の明日

「明日になったら話すね。」そう言って笑っていたのに。僕は彼女の遺体の前にいた。目の前にいるのが死んだ身体だと思えなくて、僕は涙も流れないまま立ち尽くしていた。 彼女の死因は入水自殺だった。遺書も何も残さず、彼女は死んだ。理由は誰にも分からな…

先生

先生は、昼間にしかやってこない。授業がない時にふらりとやってきて、毎回初めての部屋に来たような顔をしてコーヒーを飲む。私は先生が来る前に掃除を済ませ洗濯物を片付ける。いつもより一人分多い昼食を作っておく。普段から食の細い先生のためにサラダ…