無題

人生なんかチョロいと証明したくて、どうでもいい男と結婚した。家族はもちろん友人や職場の人間まで、沢山の人が祝ってくれた。友人達は皆羨ましがった。私は心の中で笑い、優越感に浸っていた。

 

しかし、そんな優越感に浸っていられるのもそう長くはなかった。友人の一人が、妊娠を機に結婚したのだ。私たち夫婦に子どもはいなかった。
子どもという存在は、どうやら結婚よりもはるかに貴重らしい。友人が出産すると、皆こぞって赤ん坊を見に行き、彼女の出産を讃え、友人自身もまた幸せそうに笑っていた。私の結婚などとうに忘れ去られてしまった気がして、途端に私は、何のために結婚したのだろうと思った。


毎日食事を作り掃除や洗濯を済まして買い物をする日々。結婚指輪がキラリと光る。私が結婚したのは、夫を愛していたからでも、子ども孕んだからでもない。ただ皆が難しいと嘆いていたことを簡単にやってのけたかった。幸せな人間だと思われたかった。それだけだ。

 

それからの私は、結婚生活に意味を見出せないまま、ただ一日一日を浪費することになった。

こんな日々がこの先もずっと続き、歳をとって死ぬ。そう思うと私はもう、頭を抱える以外に出来ることがなかった。